左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

50代半ば以上の人は中学校理科で、原子番号、質量数、 同位体、放射性元素、放射線、人工元素変換、核分裂を学んでいた!

 以下の原稿は、『RikaTan(理科の探検)』誌12月号の「放射能入門」から削除してしまったものです。代わりに、執筆者のプロフィール欄に、「さまき たけお 法政大学生命科学部環境応用化学科教授 専門は理科教育。36年前、中学校理科教諭としてスタート。その当時、中学校で、原子番号、質量数、同位体放射性元素放射線、人工元素変換核分裂が教科書にあったことを思い出しました。」と入れました。


◎一次原稿では入れたが二次原稿で削った文章: 
───────────────────────────
●「放射能放射線」は、中学校理科で学んでいた!
 読者のみなさんは、放射能放射線を学校で学んだでしょうか。あるいは、義務教育である中学校理科で学んだでしょうか。
 それは、読者の年齢によって違います。
 私の手元に『新訂 新しい科学3』(1971年2月 東京書籍)という中学校理科教科書があります。
 これには、1958年告示の中学校学習指導要領中学校理科の次の内容がのっています。
 「(5) 電波が受信できること、および原子の構造の大要について指導する。
 ウ 原子の構造
  (イ) 原子の構造
a 原子は、原子核と電子とからできていることを知る。
b 原子核は、陽子と中性子とからできていることを知る。
c 放射性元素は、放射線を出すことを知る。
d 人工的に元素を変換できることを知る。」
 つまり、1958年告示の学習指導要領に準拠した検定中学校理科教科書の最後の段階のものです。
 私が大学院を修了して中学校理科教員になった頃が、その教育課程の最後の段階の頃です。
 その次の教育課程(1971年学習指導要領告示 1974年4月から実施)には、前の教育課程より薄まったとはいえ、次の内容がありました。
 「(8) 物質と電気
 ウ 物質の構造
  (イ) 放射性元素の原子は、放射線を出して、ほかの元素の原子に変わること。
  (ウ) 原子は、原子核と電子とからできており、原子核は、陽子と中性子とからできていること。」
 その次の教育課程の中学校理科から放射性元素放射線の内容は消えて行きます。消えたのが1977年7月告示、1981年4月実施開始からです。今から約30年前から始まった「ゆとり」教育路線への方向転換によるものでした。
 つまり、今、40代半ばあたりに、中学校理科で放射能放射線を学んだかどうかの境目があるのです。内容的にピークの時期に学んだ人は1974年から教育課程実施の教育を受けていますから、今、50代半ば以上です。
─────────────────────────── 

 教科書に載っていたからといっても、本当に学んだかどうか、あるいは学んでもまったくその知識がはげ落ちてしまっている場合もありますが(とくに3年の最後のほうにあったので)、義務教育で、放射性元素放射線、人工元素変換核分裂を学ばせようとしたかつての文部省の考えには同感です。先進国は、今でもこのような学習内容を義務教育で学ばせています。
 核についての基礎知識は現代を生きる人に必須だと思います。


 ぼくが考える核の基礎知識は、『RikaTan(理科の探検)』誌12月号の特集で展開しますので期待して下さい(11月26日書店で発売)。