左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

放射線の基礎知識の原稿を書き始めた!(4章のうちの1章)

 某社から依頼された原稿を少し書いてみた。1章だけ。後で全体を見渡して手直しをする予定。


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1 放射線とは何か
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■原子の内部
 原子は目で見ることはできないが、現代の科学者は、いろいろな現象を通じて、原子がもっと小さな多くの粒子からなりたっていることを明らかにした。
 放射線などは、みな、原子の世界での粒子のふるまいがもとになっているものである。
 原子の中心には陽子と中性子からなる原子核がある。原子核のまわりには陽子と同じ数の電子がある。電子はとても軽いので原子1個の質量はほとんど原子核(=陽子+中性子)の質量と同じである。


【図】


 ウランヨウ素には、わずかに質量が違ういくつかの種類がある。そこで区別するために、原子核の陽子と中性子の合計を後ろにつけて表す。陽子と中性子の合計を質量数という。ウラン235ヨウ素131の数字は質量数である。
 ウラン235ヨウ素131などは、何もしなくても勝手にまわりに放射線を出して別の原子に変わっていく能力(性質)を持っている。この能力を放射能という。ウラン235ヨウ素131などは放射能を持った放射性物質である。


★脚注★【写真」★放射性物質ポロニウムラジウムを発見したキューリー夫人が放射能の名付け親。放射性物質が持つ放射線を出す能力を放射能と名づけた。


★脚注★ウランには他にウラン238などがある。
原子力発電所の核燃料はウラン235を用いている。


放射能放射性物質放射線
 「放射能」「放射性物質」「放射線」の3つの言葉はよく似ている。3つに共通している「放射」は、「1点から四方八方に飛び出すこと」「物が光や粒子などをまわりに出すこと」
である。
 そこで、燃えているロウソクを例にして、この3つの言葉を説明してみよう。ロウソクには、その大きさなどから炎が大きい物や小さい物がある。ロウソクという物が、放射性物質にあたる。それぞれのロウソクによって出せる光の強さや量が違う。つまり、ロウソクによって能力の違いがある。これが放射能にあたる。ロウソクの炎から出る光が放射線にあたる。


【図】ロウソクをたとえに使うと


★脚注★放射能…能は「能力」
放射性物質 …物質は「もの」
放射線…線は「粒子や電磁波が飛び出る線」


放射線の種類
 放射性物質が出す代表的な放射線には、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線がある。
 アルファ線…ヘリウム原子核(2個の陽子と2個の中性子とがかたく結合した粒子)の流れ
 ベータ線原子核の中からとび出した電子の流れ
 ガンマ線…エックス線に似たエネルギーの高い電磁波
 他にも放射線にはエックス線、中性子線などがある。


放射線の性質
これらの放射線は、写真のフイルムを感光させたり、けい光物質を光らせたり、物質を透過したりする。
 とくに物質を透過する(突き抜ける)性質は、人体や作物の内部に入ると細胞の成分や組織に悪影響を与えることがある。また、その性質は胃や胸などのエックス線撮影やガンの治療など医療に用いられたりしている。
 放射線の種類によって人体を透過する度合いが違う。


【図】放射線が人体にあたったときの透過性


■自然界にある放射線
 自然界には常に放射線が飛び交っている。まずは大地ではウランやトリウム、ラジウムラドンカリウム40などから常に放射線が放出されている。


★脚注★大地から出てくる気体のラドンを吸い込んでいるので、体の内部で、そのラドンから放出される放射線を浴びている。


 宇宙からは、はるか遠くの宇宙や太陽フレアからやってくる宇宙放射線も常にも地球上に降り注いでいる。
 さらに私たちの体の中にあるカリウムの一部は放射性のカリウム40である。体の内部で、カリウム40から放出される放射線を浴びている。
 これらの天然にある放射線を自然放射線という。自然放射線から私たちは逃れられない。


原子力発電所放射線
 原子力発電所の原子炉圧力容器内では、ウラン235を数パーセント含んだ核燃料に中性子をぶつけてゆっくりとした核分裂連鎖反応を起こしている。そのとき出る熱で水を温めて高温・高圧の水蒸気にして発電機をつないだタービンを回し、発電している。
 通常は、放射性物質を外部に出さないように厳重に管理しているが、事故が起こると放射性物質が外部に放出されることがある。


原子力発電所の事故と放射性物質の放出
 わが国は世界でも有数の地震国である。原子力発電所は原子炉を冷却するために大量の冷却水を使うため、海辺に設置されるが、地震が起これば津波の被害を受ける場合もある。
 そこで、高い耐震性や津波への対策、緊急時の何重もの防護策が必要になる。
 2011年3月11日に地震津波をきっかけとした東京電力福島第1原子力発電所の事故は大量の放射性物質を放出した大事故になった。何重もの防護策があったとされるが破られたのである。科学技術に100パーセント安全というものはない。原子力発電所の事故は放射性物質を放出し、子孫代々まで影響を残すことになるので、化石燃料原子力発電に依存する割合を減らして、再生可能なエネルギー資源の方向に歩を進めなければならない。


 以後、
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2 放射線の単位
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■ベクレル
シーベルト
*単位早見
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3 放射線の身体への影響
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■すぐ起きる障害(急性障害)
■ずっと後に起きる障害(晩発性障害)

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4 放射線の利用
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■医療
■工学