左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

「プルトニウム」←『知っておきたい 最新科学用語』(技術評論社)

 プルトニウムウランと同様に中性子によって核分裂しやすい元素で、核兵器に使われてきた。原子力発電にも利用可能であるが、放射性崩壊の半減期ウランのように長くないため、天然には事実上存在しないので、人工的につくりださねばならない。


 第二次世界大戦開始直後に米国で加速器実験によって発見されたが、原爆の材料になることがわかり、ナガサキ原爆に使われた。


 プルトニウムの発見は軍事機密として戦後まで秘密にされた。 核兵器用のプルトニウムの大量製造には原子炉が使われる。原子炉内で発生した中性子核分裂しにくいウランウラン238)に吸収されて、核分裂しやすいプルトニウムプルトニウム239)に変わるのである。ウランのなかに生じたプルトニウムは化学的に分離することができ、ウランのように濃縮をしないでも、核分裂しやすいプルトニウム239の割合が高い核兵器の材料に適したプルトニウムが得られる。 核兵器用製造用ではない通常の発電用の原子炉でも、発電中にウランからプルトニウムが生じていて、発電量の3割程度はプルトニウム核分裂によるものである。


 高速増殖炉を用いた核燃料サイクルでは、プルトニウムは核燃料として中心的な役割を果たす。


 微粒子状になったプルトニウムは、ごく微量でも呼吸で肺に摂取すると内部被ばくの影響が大きく、肺ガンになる危険が高い。(藤村陽)


 もう一つ、『RikaTan(理科の探検)』誌2010年12月号の藤村陽「プルトニウム 夢の物質から悪魔の物質へ」から一部を。


プルトニウムの人体への影響


 プルトニウム239はアルファ線を放出するため、プルトニウムを体内に取り込むと、その組織が集中して被ばくし、そのダメージが大きいのが特徴です。プルトニウム239は半減期が2万4千年なので、半減期が7億年のウラン235にくらべて時間当たりに出す放射線が多いため、健康への影響は比べものになりません。


 プルトニウムは水に溶けにくいので、飲み込んだ場合、胃腸では吸収されにくいのですが、微粒子を吸い込んだ場合は、肺に吸着して1年から2年程度はとどまり、その後、血液を通して骨や肝臓などに蓄積すると数十年とどまり、発がんの原因になると考えられています(図3)。


 国際放射線防護委員会の勧告でも、プルトニウムを吸い込んだ場合の年間摂取限度**は、わずか300万分の1 gとなっています。「史上最悪の人工物質」といった表現が正確かどうかは別として、非常に危険な物質であり、プルトニウム利用が広がると、核燃料工場などの施設の労働者の健康被害や、プルトニウムが飛散するような事故の防止も重要な課題になります。

生涯に浴びる被ばく線量の合計が、放射線業務事業者の被ばく線量を管理する目安

として法律で定めた1年間の被ばく線量(20ミリシーベルト)になる摂取量。