左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

かつて『地球の歩き方 インド』は1日1500円以内で旅するためのガイドブックだった

 ぼくがインドを旅した最初は約20年前だと思う。
 当時の『地球の歩き方 インド』には、表紙に1日1500円以内でインド世界を旅する、ということが書いてあった。
 そこで紹介されているホテルやゲストハウスは安宿ばかりだった。
 今回を入れて5回のインドの旅だが、『地球の歩き方 インド』には、五つ星ホテルまでもが紹介されている。ぼくにしてもかつては安宿ばかり泊まっていたが、今回はだいたい中級以上に泊まった。


 かつて『地球の歩き方 インド』に掲載されている安宿には「ぬし」のような人がいたものだ。インドを長く放浪してぼろぼろの服を着て、日本人が集まる安宿(つまりは『地球の歩き方 インド』に掲載されている宿)で、短期の旅行者をバカにしていた。


 4年前の旅のとき、バラナシの安宿Kでは、中年のオヤジが「ぬし」だった。
 そのまわりに学生たちなど若者がいた。そして大麻をやっていた。「ぬし」は、日本で数か月働き、後はインドで大麻三昧の生活をしているようだった。
 Kの雑居部屋は大麻特有の臭いが充満していた。
 ぼくらは屋上に仮設のテントを張って寝た。


 Kには何回か泊まったが、それ以前は、大麻をやる人たちは屋上でこそこそやっていた。今や部屋で車座になり公然とやっている。
 

 朝起きて屋上からガンジス河を見るとちょっとした淀みに子どもの死体が流れ着いていた。そのとき、一緒にそれを見た女性が言った。「あれれ、あそこで沐浴しようと思っていたのに…。」
 彼女は関西の有名私立大学を卒業し、フリーターをやりながらインドに来ている人だった。父親は校長だという。ぼくは当時同志社女子大学の教授だったが、彼女に言われた。「センセイ、大学で学生たちに私のようにならないように言ってください。」
 日本でまともな生活ができずにインドで大麻生活をしている自分を見つめたのだろう。 
 彼女は子どもの死体が流れ去った後、その場所で沐浴していた。


 過去の旅では、ぼろぼろな服を着て何ヶ月も放浪していることが自慢の若者が多かったが、今はあんまり見かけないようだ。ぼくが見た範囲では韓国の若者がインド世界を楽しんでいるようだ。日本人は学生たちもツアーで来ているほうが多いようだ。 

 
 昨日、インドの旅の余韻に浸っているとき、長澤ますみ主演のドラマ「ガンジス河でバタフライ」を見た。原作のたかのてるこの本も読んだと思うが印象に残っていない。ドラマはコメディタッチで初インド一人旅の雰囲気は伝わってきた。
 なぜそのドラマを見ようとしたかというと、たかのてるこ『淀川でバタフライ』講談社文庫 を読んだからだ。この本のなかで高校生のときに彼女が映画を作った話で、主演した牧野くんの結末が悲しい。彼女はその結末の後にダライ・ラマの言葉を紹介する。
 〈気だてがよくて魅力的であり、強くて健康なのに、若くして死んでしまう人々がいます。そうした人々は、実は、私たちに無常を教えてくれる師に他ならないのです。〉

 
 ついでだが、たかのてるこ日芸日大芸術学部)出身。
 今回インドで日芸出身の中村行明さんというお坊さんに出会った。ブッダ会会長。
 ラダックのシャンティストーパ、デリーの世界仏教徒センター建立を進めた人。
 かつては日本山妙法寺に所属していた。
 いま、手元に彼の書いた『たましいの童話集』(探究社)と『笑える仏教18話』(出帆新社)の2冊がある。これらはインドで読み終えた。
 後者で一番印象深かったのは「ガイドのクマール」。
 デリーでキョロキョロしている外国人を見つけて親切そうに声をかけ、さまざまな値段を実際の10倍にしてマージンを貰ったり差額を儲けたりしていた。客がそのうち何かおかしいと感じ始めると知り合いの家庭の夕食に招待。すると大感激して明日もクマールに案内してもらおうと思うのだった。
 ところがある日つかまえた客は自分の母くらいのおばさん。彼女は一人息子をインドで亡くし、息子の日記の道程を旅して息子の菩提を祈るためにやってきた。クマールを息子の再来か、お使いで自分を案内してくれると信じている。
 そのときクマールはどうしたか。
 後者は本体\1400だが、こうした話が一つでもあれば価値がある。
 しばらくしたら2冊を読み返えそうと思う。

 
 その中村さんが「旅行者は、パハールガンジ(ニューデリー駅付近のメインバザール)へよくいくけど、あそこには私は行ったことがない。あそこは、日本で言えば山谷のドヤ街だ。普通の人が足を踏み入れるところではない。」と言っていた。
 ぼくは、つい今回も最初の宿はそこでとった。
 何か「インドに来た」という雰囲気の場所だから。
 『地球の歩き方 インド』にも詳しい案内が出ている。


 で、「パハールガンジ」で検索したら、次があった。
 【注意!】メインバザール(パハールガンジ)は実はインドではない
 http://homepage3.nifty.com/worldtraveller/west_india/fake.htm
 「メインバザールは、結局インドへやってきた観光客がまず第一歩を印すところ。
 また、観光客が「インドとはこういうところなんだ!」と感動するところ。
 さらには、その「インドへやってきただけで感動している旅行初心者を、インド人たちがよってたかってボッタクルところ」なんだよ。
 それ以上でもそれ以下でもない。」


 うーん、そうだなあ。ぼくもインド人に騙されていたかもしれない。牛がいたり、ときには象が通ったりしていて、さすがインドだ、と思っていた。
 そういえば、どこかで、「国際空港からタクシーでメインバザールへ行く旅行者は
インド人から見れば吹きだまりのドヤ街に行く連中だから騙したってどうってことないんだ」というのを読んだ記憶がある。
 

 今回、デリーの最後は世界仏教徒センターで宿泊。
 ここは大変良かった。食事はおいしい。部屋もきれい。きっと一番よい部屋で、3食つきで2500ルピーだった。