左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

科学コミュニケーターという「仕事」

 昨日、科学コミュニケーション関係で有名な人と飲んだ。
 そこで科学コミュニケーション業界の話にもなった。
 科学コミュニケーターとは、一般の人への科学の伝道および逆の一般の声を科学者側に伝道する仲介役なのだろうか。
 国は数年前に北大、東大、早大に科学コミュニケーター養成のセクションをつくらせ、金を出した。その金は切れたので、今は自前でやっている。
 他にも国立天文台などにも同様のコースがある。
 科学未来館にも任期付きで働いている人たちがいる。
 そこでこれまでにコース修了で科学コミュニケーターと自称できる人を数百人は出したのではないか。
 しかし、その人たちの活動は見えてこない。
 数百人中1割でいいので科学コミュニケーターとして科学関係の本を出したとか、その専門分野で職を得たとかが聞こえてこない。ぼくだけではなく一緒に飲んだ人にも聞こえてこないという。
 専門分野での就職は厳しいのはわかる。大学や研究所に関係のポストがほとんどない。多くは修士や博士の課程を修了しているか、しつつあるので本当なら研究的ポストにつきたいのだろうと思う。もしかしたらもともとの専門分野のほうがポストがあるくらいだろう。
 実情は、ほとんどの人がフリーでやるしかないのだろう。一緒に飲んだ人はフリーで十分稼いでいるように思えた(ぼくの推測)。科学コミュニケーション関係で希有な存在の一人である。
 フリーでやるには地べたを這うような姿勢が必要と思う。来た仕事は何でもやる、仕事をとるための努力もする。しかし、科学コミュニケーターには、そういう姿勢がある人が少ないかもしれない。
 「具体的な科学コミュニケーション系の一般向けの記事を書くよりは、内輪で“哲学論争”をしているほうが好きな人が多いようだ」と一緒に飲んだ人。そういう議論は内輪で大いになされるらしい。しかし、科学コミュニケーションとはそんな内輪の活動のはずがない。
 幸いなことにわずかな人数だが、『RikaTan(理科の探検)』誌 http://rikatan.com/ には科学コミュニケーター養成コース修了生がいる。意欲がある科学コミュニケーターなら『RikaTan(理科の探検)』誌に注目していると思う。RikaTan誌がMLを中心に百数十人の企画委員でつくられていることも知っていると思う。ただし、マイナーなので意欲がない人には目に着くまい。


 ぼくも理科教育からスタートして、理科教育を土台に科学コミュニケーションの一端を担っている。ぼくのまわりで科学コミュニケーションで活躍している人たちは大部分がそうだ。
 昨日話題になった名前では滝川さん、縣さん、米村さんなど。『RikaTan(理科の探検)』誌の企画委員の大部分もそうだ。
 ぼくは、科学コミュニケーションは、広い理科教育の範囲内と思っている。理科教育の一部だと思っている。そういう目で科学コミュニケーション業界を見ていきたい。


 科学コミュニケーターは、日本の大人の科学リテラシーが低いことで科学に不安感を持っている事柄にぶつかってほしいと思う。
 たとえば遺伝子組換え(GM)食品の安全性。
 これは科学的リテラシーを上げれば、非GM食品よりも相対的に安全ということがわかるだろう。
 たとえば原発の安全性。
 これは科学的リテラシーを上げれば、原発推進でいいのかということがさらに強まるだろう。


*もしかしたら一緒に飲んだ人が言っていないかも。酔った頭での記憶をもとに書いたので。